健診項目の解説
基準値というのは、一般的に健康である人々の年齢や性別に相応した平均的な数値です。人それぞれ個性があるように、検査値にも個人差があり、さらにその日のコンディションや季節によっても違ってきます。異常を指摘されたら1つ1つのデータの変化にとらわれずに、総合判定にしたがって生活習慣の見直しを行ったり、検査や治療を受けてください。(↑は基準値上限より高値、↓は下限より低値を示します。)
報告書内の判定記号の説明
判定 | 説明 |
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A(異常なし) | 今回の検査の範囲では異常は認めませんでした。 |
B(略正常) | 僅かな異常を認めますが、医療の必要はありません。 |
C**(**か月後再検査) | Cの後に表示された数字の月数を目安に同様の検査を受けて、変化の有無を確認してください。 |
D(要医療) | 医療機関を受診して、医師の適切な指示を受けてください。 |
E1(要再検査) | 同じ検査を確認のため再度受けてください。 |
E2(要精密検査) | 当該分野に関してより詳しい検査を受けてください。 |
F(要治療継続) | これまで通り主治医の指示に従って、治療あるいは経過観察を続けてください。 |
血圧
血圧
検査の解説 | わかる病気 |
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心臓から血液を全身に送り出す圧力です。心臓が収縮して血液を押し出すときの圧力を収縮期(最高)血圧といい、逆に心臓が拡張して血液が元へ戻ったときの圧力を拡張期(最低)血圧といいます。測定時の緊張・疲労・季節等でも変動しますので、定期的に測定することをお勧めします。 | ↑血管への負荷が増え、動脈硬化・脳卒中・虚血性心疾患を起こす確率が上がります。 |
身体計測
身体計測
項目 | 検査の解説 | わかる病気 |
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BMI | BMI = 体重(kg) ÷ 身長 (m) ÷ 身長 (m) で肥満の程度を示す。22が標準です。 この数値になる体重が標準体重です。 |
スポーツマン等の筋肉質の方や妊娠中の方には当てはまらない場合もあります。 |
腹囲 | おなか周りの最も細い部分ではなく、おへその位置で測定します。 内臓脂肪がどの程度蓄積しているのかの目安になります。 |
男:85cm未満、女:90cm未満で メタボリックシンドローム非該当。 |
血液検査
血液生化学検査
項目 | 検査の解説 | わかる病気 |
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総蛋白 | 血清中に含まれる蛋白で、アルブミンとグロブリンで構成されています。 | ↑脱水症 ↓栄養不良、肝硬変、ネフローゼ症候群 |
アルブミン | 血清で一番多い蛋白で肝臓で生成されます。 | |
A/G比 | 血清中のアルブミンとグロブリンの比です。 | |
総ビリルビン | 赤血球の中のヘモグロビンが分解されたもので肝臓や胆道の異常で高値となり黄疸が出現します。 | ↑肝硬変、肝炎、胆石、胆道癌 |
AST(GOT) | 主に肝臓に含まれている酵素で、肝細胞が破壊されると血液中にもれて高値となります。GOTは他に心筋障害、筋肉疾患でも高値を示します。 | ↑肝炎、心筋梗塞 |
ALT(GPT) | ↑肝炎、胆道疾患 | |
LDH | 肝臓、腎臓、心筋、骨格筋、赤血球に多く含まれる酵素で、これらの臓器に障害があると高値を示します。 | ↑肝炎、悪性腫瘍、心筋梗塞 |
コリンエステラーゼ | 肝臓で生成され血中に供給される酵素です。肝実質の障害で活性低下を起こします。 | ↑脂肪肝 ↓慢性肝疾患、有機リン中毒、栄養状態悪化 |
ALP | 肝臓、胆道、骨に多く含まれる酵素です。 | ↑肝・胆疾患・骨疾患、悪性腫瘍 |
LAP | 肝臓、腎臓、小腸に多く含まれる酵素です。 | ↑肝・胆道疾患、妊娠 |
γ-GT(γ-GTP) | 肝疾患、胆道疾患で上昇します。特にアルコール常飲者では高値を示すのが特徴です。 | ↑アルコール性肝障害、慢性肝炎、閉塞性黄疸 |
血清アミラーゼ | 膵液と唾液の中に含まれるでんぷんを分解する酵素です。 | ↑急性膵炎、膵癌、アミラーゼ産生腫瘍 |
尿素窒素 | 肝臓で合成される老廃物で、腎障害のみならず蛋白質の多食や腸管内の出血でも上昇します。 | ↑腎炎、消化管出血、脱水 |
クレアチニン | 腎臓から尿中に排泄されます。腎機能が低下すると体内に増加し高値を示します。 | ↑慢性腎炎、腎不全、脱水 |
eGFR | 腎臓が老廃物を尿へ排出する能力の程度を示し、低いほど腎臓の働きが悪いことを示します。 | ↓腎不全 |
Na、Cl | 血清中に多く含まれる電解質で水分のバランス、浸透圧やpHの調節等大切な役割をしています。副腎皮質ホルモンの指令のもとに腎臓でコントロールされます。 | ↑脱水、食塩過剰、副腎皮質機能亢進症 ↓腎機能障害、食塩摂取不足、副腎皮質機能低下 |
K | 細胞内液に多く含まれる電解質で、神経や筋肉の興奮の維持に重要な役割を持ち、腎臓で調節されます。 | ↑腎不全、広範熱傷 ↓下痢、嘔吐、ネフローゼ |
総コレステロール | 全身の細胞を構成する主要成分で、各種のホルモンを作る材料にもなります。人間が生きていく上で欠かせない脂質の一つです。しかし、高値が続くと、動脈硬化を起こし、心筋障害や脳卒中の引き金になります。 | ↑動脈硬化、脂質異常症、甲状腺機能低下症 ↓甲状腺機能亢進症、重症肝実質障害 |
HDLコレステロール | 血管壁や細胞内から、蓄積したコレステロールを取り除いて動脈硬化を予防してくれる善玉のコレステロールです。 | ↑家族性高HDLコレステロール血症、アルコール過多 ↓動脈硬化 |
LDLコレステロール | 比重の低いリポ蛋白コレステロール。いわゆる悪玉のコレステロール。 | ↑動脈硬化、脂質異常症、高脂血症 |
non-HDLコレステロール | 総コレステロールからHDLコレステロールを引いたもので、すべての動脈硬化惹起性リポ蛋白中のコレステロールの量を表します。 | ↑心筋梗塞リスクが上昇 |
中性脂肪 | 体の中で、主にエネルギー源として使われます。過剰になると、動脈硬化をはじめ生活習慣病の原因となります。 | ↑動脈硬化、脂質異常症、糖尿病 ↓栄養不良、悪液質、甲状腺機能亢進症 |
血糖 | 血液中のブドウ糖のことです。糖尿病の診断指標になります。 | ↑糖尿病 ↓低血糖 |
HbA1c | 過去1,2ヶ月前平均の血糖値を反映する糖尿病の指標です。直前の食事時の影響を受けません。 | ↑糖尿病、腎不全、アルコール中毒 ↓溶血性貧血 |
血清鉄 | 赤血球の原料となる血液中の鉄分の量を測定します。 | ↑再生不良性貧血、急性肝炎 ↓鉄欠乏性貧血、悪性腫瘍、慢性感染症 |
全鉄結合能(TIBC) | 鉄を肝臓から骨髄へ転送する最大の能力を示す値です。 | ↑鉄欠乏性貧血、急性肝炎 ↓悪性貧血、慢性感染症 |
尿酸 | 痛風の原因物質で、長期にわたって高値が続くと足の関節等に痛みを感じ、腎結石、動脈硬化の原因物質となります。 | ↑痛風、痛風腎 |
血清
項目 | 検査の解説 | わかる病気 |
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CRP | 炎症がある時や組織が破壊された時に上昇します。 | ↑各種感染症、悪液質 |
RF | 慢性関節リウマチの人にみられる自己抗体です。肝疾患でも高値になることがあります。 | ↑関節リウマチ、慢性肝炎、肝硬変 |
血液一般検査
検査の解説 | わかる病気 | |
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白血球数 | 病原体の侵入から体を防御したり、免疫性を作る働きをします。体質的に多い人、少ない人もいます。 | ↑白血病、細菌感染症 ↓白血病、ウィルス感染症、慢性肝炎 |
赤血球数 | 貧血か多血かの判断材料になります。 | ↑脱水症、多血症 ↓貧血 |
ヘモグロビン(血色素量) | 赤血球の中の鉄と蛋白が結合した色素で酸素を運ぶ働きをします。 | ↓貧血 |
ヘマトクリット | 血液中の赤血球が占める割合です。 | ↑脱水症、多血症 ↓貧血、失血 |
MCV・MCH・MCHC | 貧血の形態を示す指数。赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリットから計算されます。 | 貧血の形態の判別 |
血小板数 | 血管が破れて出血した時に血液を固めてその破損部をふさぎ、出血を止める働きをします。 | ↑貧血、真性多血症 ↓白血病、紫斑病、肝硬変 |
血沈 | 炎症や組織崩壊がある時に亢進します。 | ↑炎症性疾患、貧血 |
白血球像
検査の解説 | わかる病気 | |
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好中球 | 細菌や毒素などから体を守る働きをします。 | ↑細菌感染、白血病 ↓ウィルス感染症、顆粒球感染症 |
好酸球 | アレルギーの発現やヒスタミンの分泌に関与しています。 | ↑アレルギー性疾患、寄生虫、淋病 ↓急性感染症、急性中毒 |
好塩基球 | アレルギーに関与した働きをしますが、数が少なく生理的に消失する場合もあります。 | ↑白血病、多血症 |
単球 | 体内の免疫と関係し、侵入してきた病原体に対する抵抗性を高める働きをします。 | ↑ウィルスや原虫の感染症 ↓敗血症 |
リンパ球 | 体内に侵入してきた抗原に対する免疫を高める働きをします。 | ↑感染症・中毒症の治癒期、白血病 ↓感染症の急性期、悪液質 |
異型リンパ球 | 進入してきた抗原に反応して変形したリンパ球です。 | ↑ウィルス性疾患(風疹、伝染性単核球症等)、感染症疾患 |
肝炎ウイルス検査
肝炎ウィルス検査
(1) HCV抗体が(+)の場合 | C型肝炎に感染している可能性が高い | 下記 |
(2) HBs抗体が(+)の場合 | B型肝炎の既往のある方 | C12 判定 |
ワクチン接種歴のある方 | B 判定 | |
(3) HBs抗原・HBe抗原・HBc抗体・HBe抗体に(+)がある場合 | B型肝炎に感染している状態 | 下記 |
(1)・(3)の場合 | 今回初めて発覚した方、受診歴のない方は、医療機関を受診されるようお勧めします。 | D 判定 |
現在治療中の方、過去に治療歴のある方、経過観察中の方は、主治医にご相談ください。 | F 判定 |
眼底・眼圧検査
眼底
検査の解説 | わかる病気 | |
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眼底の血管、視神経などを直接観察し、動脈硬化、高血圧、糖尿病等の変化の有無を調べる検査です。 眼底の動脈は脳の血管の枝分かれしたもので、脳動脈硬化の程度をよく反映します。 | 高血圧、動脈硬化、腎疾患、糖尿病による網膜症 白血病、緑内障、黄斑変性など |
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KW分類 | 高血圧性変化・動脈硬化性変化の程度を表します(0~Ⅳ) | |
Scheie-H分類 | 高血圧性変化の程度を表します(0~4) | |
Scheie-S分類 | 動脈硬化性変化の程度を表します(0~4) |
眼圧
検査の解説 | わかる病気 |
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眼圧の硬さを測定して、緑内障の有無を調べます。 | ↑緑内障 |
尿検査
尿一般検査
項目 | 検査の解説 | わかる病気 |
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比重 | 尿の濃さを調べることで、腎臓の働きを知ることができます。 | ↑糖尿病 ↓尿崩症、慢性腎炎 |
蛋白 | 腎臓に異常があると (+) になりますが、生理中や運動後に (+) になることもあります。 | ( + ) 腎疾患、発熱 |
糖 | 尿中のブドウ糖です。 | ( + ) 糖尿病、腎性糖尿病 |
ウロビリノーゲン | 尿中に出る胆汁の代謝産物の一つです。 | ( + ) 肝機能障害 ( – ) 閉塞性黄疸 |
潜血 | 腎臓、尿管、膀胱など尿が通る臓器に異常があると陽性になります。 | ( + ) 腎癌、腎炎、尿路結石、膀胱腫瘍など |
尿沈査
項目 | 検査の解説 | わかる病気 |
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赤血球 | 尿中に赤血球、白血球、上皮細胞、円柱、細菌などが増加しているかどうかを調べます。 | ↑腎炎、膀胱炎、腫瘍、結石 |
白血球 | ↑尿路系炎症 | |
上皮細胞 | ↑尿路系炎症、腫瘍 | |
顆粒円柱 硝子円柱 |
↑腎疾患、ネフローゼ |
胸部X線撮影
項目 | 検査の解説 | わかる病気 |
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直接(間接)撮影 | 肺・胸膜・心臓などの状態を調べます。 | 肺炎・肺結核・肺癌など |
CT |
上部消化管
項目 | 検査の解説 | わかる病気 |
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X線撮影 | 食道・胃・十二指腸の状態を調べます。 | 胃(十二指腸)潰瘍・胃癌など |
内視鏡 |
胃の生体組織検査 | グループ1 | 正常組織及び非腫瘍性病変 | 正常範囲 |
グループ2 | 腫瘍(腺腫または悪性)か非腫瘍性か判断の困難な病変 | C**判定・D判定・E判定 | |
グループ3 | 腺腫 | D判定・E2判定 | |
グループ4 | 腫瘍と判定される病変のうち、悪性が強く疑われる病変 | ||
グループ5 | 悪性の疑いと判定される病変 |
胃がんリスク検査(血液検査)
ヘリコバクターピロリIgG抗体
(+)の場合は胃粘膜にピロリ菌が生息しており将来の胃癌発症リスクが高いと判断されます。除菌療法の適応がありますので受診なさってください。
(-)の場合でも抗体価が 3.0~9.9 の場合は陰性高値とされ、2割の方にピロリ菌が生息するといわれていますので、尿素呼気法や便中抗原測定法を受けられるようにお勧めします。
ペプシノゲン
食べ物の消化に関与する『ペプシノゲン』という物質の血中濃度を測定することで、胃粘膜の萎縮(老化)の状態を客観的に調べます。
ABC分類
血液検査でピロリ菌感染の有無(ヘリコバクターピロリIgG抗体検査)と胃粘膜萎縮度(ペプシノゲン検査)を調べ、その結果を組み合わせて胃癌のリスクをA、B、C、D、Eに分類して評価する検査です。胃癌そのものを見つけ出す胃癌検診に代わる検査ではありません。
糞便検査
項目 | 検査の解説 | わかる病気 | ||
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便潜血反応 | 大腸がん等、大腸疾患発見のスクリーニング検査です。 | ( + ) 大腸がん、大腸ポリープ、大腸炎症性疾患 |
検査の解説 | わかる病気 |
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心臓の筋肉が収縮したりするときに流れる、ごくわずかな電気を記録し波形に表したものです。 | 心肥大・心筋梗塞、心筋症・不整脈など |
腹部超音波検査
検査の解説 | わかる病気 |
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肝臓、胆嚢、腎臓、膵臓、脾臓などの腹部臓器を超音波で調べます。 体型・体格によっては臓器の一部が見えないこともあります。 |
肝臓・胆嚢・腎臓・膵臓・脾臓の各疾患(ポリープ・結石・腫瘍・嚢胞など) |
乳房触診・乳房X線検査・乳房超音波検査
乳腺(乳触診・X線撮影・超音波検査)
検査の解説 | わかる病気 | |||
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腫瘍の有無やリンパ節の腫れがないかを調べます。 | 乳がん・腫瘍 | |||
X線撮影判定でのカテゴリー表示について | ||||
判定基準 | カテゴリー 1 | 異常認めない。 | 正常範囲 | |
カテゴリー 2 | 良性の所見。精密検査や治療の必要なし。 | |||
カテゴリー 3 | 良性の可能性が非常に高いが、悪性を否定できない。 | 要精密検査 | ||
カテゴリー 4 | 悪性の疑いが濃厚な所見。 | 乳腺外来受診 | ||
カテゴリー 5 | 悪性の疑いと判定される所見。 | |||
(高濃度乳房とは乳腺組織が多い乳房を意味し、特に異常ということではありません。次回は超音波での検査をおすすめします。) |
乳房触診・乳房X線検査・乳房超音波検査
子宮内診・超音波検査
検査の解説 | わかる病気 | |||
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子宮、卵巣などの状態を調べます。 | 子宮がん、子宮筋腫、ポリープ、卵巣腫瘍など |
子宮細胞診の分類
子宮内診・超音波検査
ベセスダシステム(医会分類)により判定しています。
ベセスダ分類 | 推定される病変 | 判定 |
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NILM | 陰性 | 正常判定 |
ASC-US | 意義不明な異型扁平上皮細胞 | 婦人科受診 |
ASC-H | HSILを除外できない異型扁平上皮細胞 | |
LSIL | 軽度異型扁平上皮細胞 | |
HSIL | 重度異型扁平上皮細胞 | |
SCC | 扁平上皮癌 | |
AGC | 異型腺細胞 | |
AIS | 上皮内腺癌 | |
Adeno Ca | 腺癌 | |
Other malig | その他の悪性腫瘍 |
前立腺
項目 | 検査の解説 | わかる病気 |
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PSA | 前立腺の肥大・腫瘍の有無の可能性を調べます。 | ↑前立腺肥大、腫瘍の疑い |