胸部CT検査による肺がん検診とは?肺がん死亡率を下げるエビデンスを紹介!

さまざまながんの中で、最も死亡数が多い肺がん[※1]。特に男性では、肺がんの死亡数は他のがんと比べて群を抜いて多く、早期発見が非常に重要ながんの1つと言えます。今回は、肺がん検診の内容や早期発見に役立つ検査について、詳しく解説します。
肺がん検診はなぜ必要?知っておきたい基本知識
国立がん研究センターの最新統計によると、1年間で肺がんと診断された人の数(罹患数)は、男性82,749人、女性41,782人で、肺がんは男女ともに罹患数の多いがんです。
肺がんは早期の段階では自覚症状に乏しく、進行した状態で発見されることも少なくありません。そのため、他のがんと比べて死亡率が高く、男女合わせた死亡数はすべてのがんの中で第1位となっています[※1]。
部位別死亡率 年次推移

肺がんの最も重大な危険因子は喫煙であり、喫煙者は肺がんの発症リスクが高いことが知られています。非喫煙者と比べて、喫煙者が肺がんになるリスクは男性で4.4倍、女性で2.8倍であり[※2]、喫煙者では肺がん検診の重要度がより高いと言えます。
ただ、近年は非喫煙者の肺がんが増えており、女性の肺がん患者の約75%は喫煙歴がなかったというデータも報告されています[※3]。「タバコを吸っていないから大丈夫」「女性だから大丈夫」と思わず、どんな人でも40歳を過ぎたら定期的に肺がん検診を受けることが大切です。
肺がん検診で行われる検査

肺がんは、死亡率が高いがんだからこそ、早期に発見して適切な治療を受けることが非常に重要です。国は、日本人に多い5つのがんについて、がん検診の受診を推奨していますが、肺がんも40歳以上の男女を対象に、1年に1回の肺がん検診が推奨されています。
国の指針に基づき実施する肺がん検診では、自覚症状の有無にかかわらず、対象者である40歳以上の男女全員に「胸部X線検査」を受けることが推奨されています。胸部X線検査は、いわゆるレントゲン検査で、肺がんによる死亡を減らす効果があることが分かっています。
50歳以上で喫煙指数が高い人([1日の喫煙本数×喫煙年数]が600以上の人)では、肺がんのリスクが高いと考えられるため、胸部X線検査に加えて喀痰細胞診(かくたんさいぼうしん)という検査も追加で行います。喀痰細胞診とは、採取した痰の中にがん細胞がないか、顕微鏡で調べる検査です。喀痰細胞診は単独で実施することはなく、胸部X線検査と組み合わせて実施します。
なお、肺がんの診断に利用される血液検査として、血液中の腫瘍マーカー(がん細胞が作り出すタンパク質)を調べる検査もありますが、この検査はあくまで補助的な役割であり、腫瘍マーカーだけで肺がんを早期発見することは困難です[※4]。
レントゲンで見つけにくいがんを発見できる胸部CT検査

前述のとおり、我が国の肺がん検診で推奨される検査は胸部X線検査です。
胸部X線検査は検査が簡便に行える、多くの医療機関で実施が可能というメリットがあり、長年にわたり国の指針に基づく肺がん検診で推奨されてきた検査方法ですが、1cm以下の小さな肺がんを見つけることが難しいというデメリットがあります。そこで近年、より早期に肺がんを発見するために、胸部CT検査を用いた肺がん検診が登場しています。
通常のCT検査はX線検査と比べて被ばく量が多いという懸念がありますが、一般的に、肺がん検診のためのCT検査は、被ばく量1ミリシーベルト程度の「低線量CT検査」を行います。私たちは日常生活の中でも自然界に存在する放射線を浴びており、自然被ばく量は年間で2.4ミリシーベルト程度とされていますので、検査による被ばくリスクは生活環境によるリスクに比べても心配するほどではありません[※5]。
胸部X線検査と胸部CT検査の特徴
| 胸部X線検査(レントゲン) | 胸部CT検査 | |
|---|---|---|
| 検査の方法 | X線撮影装置のパネルに胸を密着させ、息を大きく吸い込んでから数秒間息を止め、その状態で撮影する | 検査台の上に仰向けになり、トンネル状の装置内に入った状態で撮影する |
| メリット | ● 検査が簡便に行える ● 多くの医療機関で実施しやすい | ● 肺がんを検出する画像検査として、今のところ最も有力な検査とされている ● X線検査では発見できない早期の小さな肺がんやすりガラス陰影(肺がんの可能性がある病変)を検出できる |
| デメリット | ● 肺に異常があっても、心臓や血管、横隔膜などと重なるとはっきり写らない場合がある | ● 肺がんではない小さな病変を「肺がんの疑いがある」と判定する可能性がある(過剰診断) |
アメリカで実施された臨床試験によると、重喫煙者(喫煙指数が600以上の人)に対する肺がん検診では、X線検査よりも低線量CT検査を用いた方が肺がんの発見率が高く、肺がんによる死亡が20%減少したと報告されています[※6]。ヨーロッパの臨床試験でも、低線量CT検査の実施が肺がん死亡率を24%減少させることが示されています[※7]。
こうした研究結果を受け、2025年に改訂された日本の「肺がん検診ガイドライン」でも、重喫煙者(喫煙指数が600以上の人)に対しては、肺がん検診として低線量胸部CT検査を受けることが推奨されています[※8]。検査にかかる費用は自己負担となりますが、50歳以上の重喫煙者ではメリットの大きい検査と言えるでしょう。
一方、重喫煙者以外の人に対するエビデンスは不足しているため、肺がん検診として低線量CT検査を受けるかどうかは個人の判断に委ねるとされています[※8]。近年は非喫煙者の肺がんが増えてきており、喫煙とは関連が薄い遺伝子の異常が肺がんのリスクを高めることも分かってきています。こうしたことから、タバコを吸わない方であっても、一定年齢以上になったら、人間ドックのオプションなどで胸部CT検査を追加することを検討するのもよいでしょう。
当医療法人の各クリニックでも胸部CT検査を実施しており、各種人間ドック・健康診断に追加して受診することが可能です。
胸部CT検査が受けられる進興会の医療機関
各施設で胸部CT検査を実施しています。受診をご希望の方は、各施設へお気軽にお問い合わせください。
<東京>
| 施設名 | アクセス |
|---|---|
| 進興クリニック | 大崎駅直結 徒歩約2分 |
| オーバルコート健診クリニック | ・大崎駅 徒歩約5分 ・五反田駅 徒歩約9分 |
| セラヴィ新橋クリニック | ・新橋駅 徒歩約5分 ・御成門駅 徒歩約7分 ・内幸町駅 徒歩約5分 ・虎ノ門ヒルズ駅 徒歩約8分 ・虎ノ門駅 徒歩約10分 ・汐留駅 徒歩約8分 |
| 立川北口健診館 | 立川駅 徒歩約5分 |
<名古屋>
| 施設名 | アクセス |
|---|---|
| ミッドタウンクリニック名駅 | 名古屋駅直結 徒歩約1分 |
<仙台>
| 施設名 | アクセス |
|---|---|
| せんだい総合健診クリニック | ・あおば通駅 徒歩約6分 ・仙台駅 徒歩約8分 |
<札幌>
| 施設名 | アクセス |
|---|---|
| 札幌フジクリニック | ・札幌駅直結 徒歩約5分 |
参考文献
※1:国立がん研究センター, がん情報サービス 最新がん統計
※2:国立がん研究センター, がん情報サービス 肺がん予防・検診
※3:Seki T, et al.: Cancer Sci. 2013; 104: 1515-1522.
※4:日本肺癌学会, 肺癌診療ガイドライン 2024年版
※5:国立研究法人 量子科学技術研究開発機構 CT検査など医療被ばくに関するQ&A
※6:National Lung Screening Trial Research Team, et al.: N Engl J Med
. 2011; 365: 395-409.
※7:de Koning, HJ, et al.: N Engl J Med. 2020; 382: 503-513.
※8:国立がん研究センター がん対策研究所, 有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン2025年度版
監修

森山 紀之(医療法人社団進興会 理事長)
1973年千葉大学医学部卒。
元国立がん研究センター がん予防・検診研究センター センター長、
東京ミッドタウンクリニック常務理事 兼 健診センター長を経て、現職。




