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40代から受けておきたいPSA検査による前立腺がん検診

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この40年間で、罹患数が約30倍に上昇している前立腺がん。現在では、肺がん、大腸がんと並び男性がかかる主要ながんの1つになっています。前立腺がんが増えた要因の1つに、PSA検査が普及し、早期発見が可能になったことが挙げられます。今回は、検査の費用や基準値も含め、前立腺がん検診のためのPSA検査について詳しく解説します。

近年急激に増えている、前立腺がん

前立腺がんは、男性がかかるがんの中で最も罹患数の多いがんです。国立がん研究センターによると、生涯で前立腺がんにかかる人の割合は9人に1人に上ると推計されています[※1]。

前立腺がんが近年急激に増えている背景として、人口の高齢化や生活習慣の欧米化などが指摘されています。様々な研究結果から、脂肪の多い食生活や喫煙、メタボリックシンドローム、肥満などの要因が前立腺がんの発症リスクを高めることが知られています。

2023年の国民健康・栄養調査によると、男性における肥満者(BMI 25以上)の割合は、40代で34.3%、50代で34.8%、60代で35.0%となっており、いずれの世代でも3割を超えています[※2]。肥満は悪性度の高い前立腺がんの発症リスクを高めると考えられており、肥満の問題を抱える現代の日本人男性にとって、前立腺がんは決して軽んじてはいけない病気といえます。

男性における肥満者(BMI 25以上)の年齢階級別割合

前立腺がんは比較的ゆっくり進行する場合が多く、早期に発見して適切な治療を行えば、完治を見込めます。だからこそ、いかに早い段階で前立腺がんを見つけるかが大切なのです。

PSA検査を用いた前立腺がん検診とは

日本では、厚生労働省が定めた指針に基づいて、各自治体ががん検診を実施しています。現在がん検診の対象となっているのは、胃がん、肺がん、大腸がん、子宮頸がん、乳がんの5種類のがんで、前立腺がんは対象になっていません。

ただ、前立腺がんは男性が最もかかる可能性の高いがんであり、適切な対策は不可欠です。日本泌尿器科学会は、「PSA検査を用いた前立腺がん検診は効率がよく、がんによる死亡率を低下させる」として、前立腺がん検診の受診を推奨しています[※3]。

PSA検査とは、「PSA(前立腺特異抗原)」という前立腺で作られるタンパク質の血中濃度を測定する検査です。通常、PSAは前立腺の腺管内に閉じ込められており、血液中にはごく微量しか存在しません。しかし、がんや炎症などによって前立腺の腺管構造が壊されると、PSAが血液中に漏れ出します。このため、血液中のPSA濃度を測定し、値が高ければ前立腺がんなどの病気の疑いを発見できるのです。

PSA検査はわずか1mL程度の血液を採取するだけで実施できる精度の高い検査であり、PSA検査による前立腺がん検診が普及しているスウェーデンでは、死亡率を低下させることが証明されています[※4]。こうしたことから、日本でも全国の80%以上の自治体が独自にPSA検査による前立腺がん検診を実施しています。

自治体の前立腺がん検診ならわずかな自己負担金で受診できるので、対象となっている方は積極的な受診をおすすめします。お住まいの自治体で前立腺がん検診が実施されていない場合でも、人間ドックなどで受ける機会があれば、ぜひ検討してみましょう。

PSA検査を受けたい年代と基準値・費用

前立腺がんは40歳代後半から50歳代にかけて徐々に増加し、70歳代後半でピークを迎えます[※5]。そのため、健康診断や人間ドックなどでPSA検査を受ける機会がある方は、40歳代から受診を検討するのがおすすめです。自費診療としてPSA検査を受ける場合、検査費は一般的に2,000~4,000円程度です。

年齢階級別前立腺がん罹患率

前立腺がんは家族歴(家族や血縁者に前立腺がんにかかった人がいること)が発症リスクを高める要因の1つとされており、父親や兄弟、子どもに前立腺がんの患者さんがいる場合は、40歳からPSA検査を受けることが推奨されます。

PSAの基準値は、一般的には4.0ng/mL以下が正常範囲とされています。ただし、PSA値は年齢とともに上昇するため、50~64歳では3.0ng/mL以下、65~69歳では3.5ng/mL以下、70歳以上では4.0ng/mL以下と、年齢に応じた基準値を採用することもあります。

たとえ基準値以下だったとしても、小さな前立腺がんが隠れている場合もあるため、PSA検査は定期的に受けることが大切です。PSA値が1.0ng/mL以下の場合、前立腺がんの可能性は低いと考えられることから、PSA検査の受診間隔は3年に1度でよいでしょう。1.0ng/mLを超える場合は、1年に1度の間隔で検査を受けることが推奨されています[※6]。

PSAが高いと言われたら、前立腺がんなの?

PSAが基準値を超える場合、前立腺に何らかの異常が疑われます。ただ、PSAは前立腺がんだけでなく前立腺肥大症や前立腺炎などの病気でも数値が上昇するため、PSAが高いからと言って必ずしも前立腺がんがあるというわけではありません。

そのため、健康診断などでPSAが高いと指摘されたら、まず泌尿器科専門の医療機関を受診し、精密検査を受けるべきかを医師に相談することが大切です。PSA値が4.1~10ng/mLはグレーゾーン、それ以上は値が高いほど前立腺がんの可能性が高いとされており、速やかに専門医の診察を受けることが推奨されます。

泌尿器科を受診すると、PSAを再度測定して数値の変動を確かめた上、超音波検査や直腸診、場合によってはMRI検査などの検査を行うことが一般的です。診察や検査で前立腺の異常の有無を調べ、総合的に判断して、さらに精密検査が必要と考えられる場合は、「前立腺生検」という検査を行います。

前立腺生検は、前立腺に細い針を刺して組織を採取し、がん細胞の有無を顕微鏡で調べる検査です。前立腺がんかどうかを確定するためには不可欠な検査ですが、体への負担を考慮して、先にMRI検査を実施することもあります。

前立腺がんは進行がそれほど早くないため、MRI検査で明らかにがんが疑われるような所がなければ、生検をせずにそのまま経過観察となる場合も少なくありません。大切なのは、PSAが高いと指摘されたら放置せず、体の状態に応じた検査・治療を受けられるように、必ず医療機関を受診することです。

PSA検査が受けられる進興会の医療機関

進興会では、各種健康診断・人間ドックのオプションとしてPSA検査を実施しています。施設によっては前立腺超音波検査など、PSA検査と組み合わせて前立腺の病気を調べられる検査もご用意しています。詳しくは、各施設にお問い合わせください。

<東京>

施設名アクセス
進興クリニック大崎駅直結 徒歩約2分
進興クリニック アネックス大崎駅 徒歩約2分
オーバルコート健診クリニック・大崎駅 徒歩約5分
・五反田駅 徒歩約9分
セラヴィ新橋クリニック・新橋駅 徒歩約5分
・御成門駅 徒歩約7分
・内幸町駅 徒歩約5分
・虎ノ門ヒルズ駅 徒歩約8分
・虎ノ門駅 徒歩約10分
・汐留駅 徒歩約8分
浜町公園クリニック・浜町駅 徒歩約1分
・人形町駅 徒歩約8分
・水天宮前駅 徒歩約9分
立川北口健診館立川駅 徒歩約5分
東京ダイヤビルクリニック・茅場町駅 徒歩約8分
・八丁堀駅 徒歩約8分

<名古屋>

施設名アクセス
ミッドタウンクリニック名駅名古屋駅直結 徒歩約1分

<仙台>

施設名アクセス
せんだい総合健診クリニック・あおば通駅 徒歩約6分
・仙台駅 徒歩約8分

<札幌>

施設名アクセス
札幌フジクリニック・札幌駅直結 徒歩約5分

参考文献

※1:国立がん研究センター, がん情報サービス 最新がん統計
※2:厚生労働省, 令和5年国民健康・栄養調査報告
※3:日本泌尿器科学会, PSA検診に関する声明文
※4:Hugosson J, et al.: Lancet Oncol. 2010; 11: 725-732.
※5:国立がん研究センター, がん情報サービス がん種別統計情報 前立腺
※6:日本泌尿器科学会, 前立腺癌診療ガイドライン2023年版

監修

森山 紀之(医療法人社団進興会 理事長)
1973年千葉大学医学部卒。
元国立がん研究センター がん予防・検診研究センター センター長、
東京ミッドタウンクリニック常務理事 兼 健診センター長を経て、現職。

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