しこりや痛みは乳がんのサイン?知っておきたい乳がんの初期症状

乳がんと診断される人の数は、毎年約10万人[※1]。あらゆるがんの中で、乳がんは女性が最もかかりやすいがんです。内臓にできるがんとは違い、乳がんはからだの表面に近い部分にできるため、自分で見つけられる可能性があります。今回は、早期発見のために知っておきたい乳がんの初期症状や、セルフチェックのポイントについて詳しく解説します。
乳がんの原因と発症しやすい年齢
乳がんとは、乳房の中にある乳腺という組織にできるがんです。乳腺は、母乳が作られる小葉(しょうよう)と母乳の通り道となる乳管からできており、乳がんの多くは乳管から発生するとされています。乳腺組織は男性にも存在するため、男性でもごくまれに乳がんになることがあります。
乳がんは女性がかかるがん全体の20%以上を占め、女性のがんの中で最も発生頻度が高いがんです。乳がんにかかる人の割合(罹患率)は年々上昇傾向にありますが、その理由にライフスタイルの変化が関係していると考えられています。
部位別がん罹患数【女性 2021年】

出典:国立がん研究センター がん情報サービス がん統計 乳がん(罹患数の最新統計情報)
乳がんの発生には、女性ホルモンのエストロゲンが深く関わっています。初産の年齢が高い人や出産・授乳の経験がない人では、エストロゲンの影響を受けやすく、乳がんの発症リスクが高いとされています。また、エストロゲンを含む経口避妊薬を使用したり、更年期障害の治療でホルモン補充療法を行ったりすることでも、乳がんの発症リスクがわずかに高まるといわれています。
そのほか、飲酒や喫煙、運動不足などの生活習慣や、閉経後の肥満、糖尿病の持病なども乳がんの発症リスクを高める要因となります。
乳がんの罹患率は30歳代後半から急激に上昇し、45歳前後でピークに達します[※2]。その後、罹患率がやや下がり、65~75歳で第2のピークを迎えます。かつては閉経後の乳がんはそれほど多くありませんでしたが、現在は2つのピークを持つ二峰性が乳がんの特徴であり、閉経後であっても注意が必要です。
年齢階級別罹患率【乳房 2021年】

出典:国立がん研究センター がん情報サービス がん統計 乳がん
乳がんではどんな症状が現れる?

初期の乳がんでは、体調が悪くなるといった全身の症状はほとんどなく、症状は乳房に現れます。代表的なのが、乳房のしこりです。自分でしこりに気づいたことがきっかけで乳がんが見つかることも少なくありません。そのほかにも、乳房の形や皮膚の変化、乳頭からの分泌物などの症状が現れることもあります[※3]。
(1)乳房のしこり
「しこり」とは、医学的には腫瘤(できものの総称)といい、乳がんの場合は皮膚の上から触れるとこりこりとした硬い触感があります。通常、しこり自体に痛みを伴うことはほとんどありません。
乳房のしこりは、乳腺症や乳腺線維腺腫などの乳がん以外の病気でも現れます。しこりの大部分は良性(体への影響がほとんどない)のもので、基本的に治療の必要はありません。ただ、触っただけではそれが悪性なのか良性なのかは判断できないため、乳房や脇の下にしこりを感じたら、医療機関を受診することが推奨されます。
■乳がん以外で乳房にしこりができる主な病気[※4, 5]
病名 | 特徴 |
---|---|
乳腺症 | ● 30~40歳代の女性に多くみられる乳腺の良性の変化の総称 ● 主な症状はしこりや痛みで、月経前に増大し月経後に縮小する |
乳腺線維腺腫 | ● 10歳代後半~40歳代の女性に多く見られる代表的な良性腫瘍 ● 触るとコロコロしていて、よく動くしこりが特徴 |
葉状腫瘍 | ● 乳房にできるしこりの1%程度を占める。良性のものがほとんどだが、悪性のものもある ● 初期の段階では線維腺腫と似ているものの、しこりが急速に大きくなることが多いのが特徴 ● 通常は手術による摘出が必要 |
乳腺炎 | ● 乳腺内の母乳のうっ滞(溜まること)や細菌感染によって起こる乳房の炎症 ● 腫れ、痛み、うみ、しこりなどの症状が現れる |
(2)乳房の形の変化(くぼみ、引きつれ、赤み、腫れ)
乳がんが皮膚の近くにあると、乳房の皮膚がひっぱられて一部がくぼんだり、すじ状の引きつれが起こったりすることがあります。また、乳頭が陥没したり、乳頭の向きが変わるといった変化がみられることもあります。
乳がんの中にはしこりができず、乳房が赤く腫れる炎症性乳がんという珍しいタイプもあります。乳房の腫れは乳腺炎でもみられますが、炎症性乳がんでは乳房が赤く腫れ、熱感や硬さ・厚みを感じることが特徴です。一般的な乳がんと比べて進行のスピードが速いため、異常に気付いたらできるだけ早く医療機関を受診することが大切です。
(3)乳頭からの分泌物
乳頭からの分泌物も乳がんの症状の1つです。乳腺症などでも分泌物がみられることがありますが、血液が混じった分泌物(黒っぽい赤色や褐色)は乳がんが疑われるため、症状に気づいたらそのままにせず、医師の診察を受けるようにしましょう。
(4)乳頭や乳輪のただれ
乳頭や乳輪の皮膚のただれやびらん(ジュクジュクした傷のような状態)は、早期の乳がんの症状である場合があります。湿疹などの皮膚の病気の可能性もありますが、なかなか治らない場合は医師に相談するようにしましょう。
(5)乳房の痛み
乳がんは早期の段階では痛みを伴わないことが多いですが、進行すると痛みが現れることがあります。長期間にわたって片側の乳房だけに痛みを感じるようなら、乳がんの疑いもあるため、医師に相談することをおすすめします。
乳がんを早期発見するために、セルフチェックを!

乳がんは、自分で乳房の状態をチェックすることで早期発見できる可能性のあるがんです。医師のような触診をして、自分自身でしこりを探そうとする必要はありません。大切なのは、乳房のちょっとした変化に気づくことです。日ごろから自分の乳房に関心を持ち、着替えや入浴の際に乳房を見たり、触ったりする習慣をつけるようにしましょう。
乳房のしこりやくぼみ、分泌物など、前述のような乳がんの症状が疑われる乳房の変化に気づいたら、すぐに乳腺外科・乳腺科の医療機関を受診することが重要です。乳がんは、早期の段階で適切な治療を行えば完治する可能性の高いがんです。だからこそ、乳房の変化に気づいたら迷わず、すぐに医師に相談しましょう。
早期発見のためには、セルフチェックと合わせて、定期的に乳がん検診を受けることも大切です。40歳以上の女性は自治体が実施する乳がん検診の対象となっているので、2年に1度、必ず受診するようにしましょう。乳がんの罹患率は30歳代から上昇するため、40歳未満の女性も、人間ドックや会社の健康診断などで機会があれば、乳がん検診を受けておくことをおすすめします。
乳がんを調べる検査には、マンモグラフィや超音波(エコー)検査があります。40歳以上の方はマンモグラフィによる乳がん検診が推奨されていますが、超音波検査のほうが見つけやすい病変もあるため、可能であればマンモグラフィと超音波検査の両方を受けるのが理想的です。乳腺が発達している若い女性の場合、マンモグラフィではしこりの有無が分かりにくいことがあるため、超音波検査の方が適しているでしょう。
マンモグラフィと超音波検査は当医療法人の各クリニックで実施していますので、乳がん検診をご希望の方は最寄りのクリニックへお気軽にお問合せください。
乳がん検診を受けられる進興会の医療機関
<東京>
施設名 | アクセス |
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進興クリニック | 大崎駅直結 徒歩約2分 |
進興クリニック アネックス | 大崎駅 徒歩約2分 |
オーバルコート健診クリニック | ・大崎駅 徒歩約5分 ・五反田駅 徒歩約9分 |
セラヴィ新橋クリニック | ・新橋駅 徒歩約5分 ・御成門駅 徒歩約7分 ・内幸町駅 徒歩約5分 ・虎ノ門ヒルズ駅 徒歩約8分 ・虎ノ門駅 徒歩約10分 ・汐留駅 徒歩約8分 |
浜町公園クリニック | 浜町駅 徒歩約2分 |
立川北口健診館 | 立川駅 徒歩約5分 |
東京ダイヤビルクリニック | ・茅場町駅 徒歩約8分 ・八丁堀駅 徒歩約8分 |
<名古屋>
施設名 | アクセス |
---|---|
ミッドタウンクリニック名駅 | 名古屋駅直結 徒歩約1分 |
<仙台>
施設名 | アクセス |
---|---|
せんだい総合健診クリニック | ・あおば通駅 徒歩約6分 ・仙台駅 徒歩約8分 |
<札幌>
施設名 | アクセス |
---|---|
札幌フジクリニック | ・札幌駅直結 徒歩約5分 |
参考文献
※1:国立がん研究センター, がん情報サービス 最新がん統計
※2:国立がん研究センター, がん情報サービス がん種別統計情報 乳房
※3:厚生労働科学研究費 乳がん検診の適切な情報提供に関する研究 ブレスト・アウェアネス(乳房を意識する生活習慣)のすすめ
※4:国立がん研究センター, がん情報サービス 乳がんについて
※5:国立がん研究センター, 希少がんセンター 乳腺悪性葉状腫瘍
監修

森山 紀之(医療法人社団進興会 理事長)
1973年千葉大学医学部卒。
元国立がん研究センター がん予防・検診研究センター センター長、
東京ミッドタウンクリニック常務理事 兼 健診センター長を経て、現職。