前立腺がんはどんな人がなりやすい?原因、症状、早期発見に役立つ検査を解説

男性にとって最も身近ながんの1つである、前立腺がん。高齢になるほどかかりやすくなるがんですが、近年は40代や50代の若い世代で発症する人も増えてきています。今回は、前立腺がんのリスクを高める原因や主な症状、さらに早期発見に役立つ血液検査、画像検査を詳しく解説します。
前立腺がんとは?
前立腺は、男性にだけあるクルミ大の臓器です。膀胱のすぐ下に位置しており、精液の一部となる前立腺液を作るはたらきをしています。
前立腺がんは、前立腺の細胞が何らかの要因によって正常に増殖する機能を失い、異常な細胞が修正されることなく増殖していく悪性腫瘍の1つです。がんは周囲の正常な組織を破壊して広がり、進行するにつれて精のうや膀胱、直腸などに浸潤(がんが周囲にしみ出るように広がること)していきます。
前立腺がんは多くの場合、比較的ゆっくり進行するといわれており、早期に発見して適切な治療を行えば、治癒(病気が完全に治ること)が望めます。がんが前立腺の中にとどまっている早期の段階では、5年相対生存率は100%であり、がんが前立腺に隣接する周囲の臓器に広がっている場合でも、99.2%という高い値となっています[※1]。
前立腺がんになりやすい人は?
前立腺がんの罹患率は年齢が上がるにつれて上昇し、発症のピークは70代後半です。そのため、典型的な高齢者のがんといわれています。人口の高齢化に伴い、日本における前立腺がんの罹患率はここ20年間で急増しています[※1]。
一方で、近年は50代の若い世代においても前立腺がんの罹患率は増えており、30代や40代での発症も見られます。特に若い世代の発症には家族歴が関係すると考えられており、家族の中に前立腺がんにかかったことがある人がいる場合は、若いうちから前立腺がんに気を付ける必要があります。
前立腺がんの発症リスクを高める原因

前立腺がんの発症リスクを高める要因には、先天的なものと後天的なものがあります。先天的な要因には、人種や年齢、家族歴、遺伝的な要因などがあります。一方、後天的な要因には、食生活、喫煙、メタボリックシンドロームなどが知られています。
| 先天的なもの | 後天的なもの | |
|---|---|---|
| 発症リスクを高める要因 | ・人種 ・年齢 ・家族歴 ・遺伝的な要因 | ・欧米型の食生活 ・喫煙 ・過度な飲酒 ・メタボリックシンドロームや肥満 |
①家族歴
前立腺がんは、様々ながんの中でも、特に遺伝的な要因が発症に大きく関係しているがんの1つです。第1度近親者(親・兄弟・子ども)に前立腺がん患者さんがいる場合、前立腺がんの発症リスクは2.5~5.6倍に高まるとされています[※2]。
第1度近親者が若くして前立腺がんを発症している、兄弟が前立腺がんを発症している、家族の中に前立腺がんにかかった人が複数いるなどの場合は、さらにリスクが高まる傾向があります。前立腺がんの家族歴がある場合は、40歳を過ぎたら前立腺がん検診を受けることが推奨されます。
②食生活
脂肪の多い食事は前立腺がんの発症リスクを高める可能性があるといわれています。前立腺がんは男性ホルモンであるアンドロゲンの影響を受けて増殖しますが、動物性脂肪に含まれる飽和脂肪酸はアンドロゲンの産生を増加させることが指摘されており、これがリスクを高める理由の1つではないかと考えられています。
一方で、DHAやEPAなどのn-3系やリノール酸やアラキドン酸などのn-6系の多価不飽和脂肪酸は、前立腺がん細胞の増殖を抑制する作用があることが知られています。これらの多価不飽和脂肪酸は魚に多く含まれていますが、実際に魚をほとんど食べない人では、魚を多く食べる人と比べて前立腺がんの発症リスクが2倍以上高いことも分かっています[※3]。
③喫煙
喫煙でリスクが高まるがんは肺がんなどがよく知られていますが、実はそれ以外の多くのがんの発症リスクを高めるとされており、前立腺がんのリスクも高めるといわれています。
喫煙年数が長い人、喫煙本数が多い人では特に注意が必要です。40年以上の喫煙歴がある場合は1.38倍に、また1日の喫煙本数が25本以上のヘビースモーカーでは前立腺がんの死亡リスクが1.81倍に高まると報告されています[※3]。
④メタボリックシンドローム、肥満
糖尿病や高血圧、脂質異常症、肥満のうち、複数に該当する人では、前立腺がんの発症リスクが高いことが分かっています。メタボリックシンドロームも前立腺がんの発症リスクになるという研究結果が報告されており、メタボリックシンドロームの予防・治療は間接的に前立腺がんの予防につながると考えられます。
前立腺がんには、悪性度の低いタイプと悪性度の高いタイプがありますが、肥満は悪性度の高い前立腺がんの発症リスクを高める可能性があると指摘されています[※3]。
前立腺がんの症状と前立腺肥大症

早期の前立腺がんでは、多くの場合、自覚症状がありません。がんが大きくなって尿道が圧迫されると、尿が出にくい、排尿の回数が多いなど、主に排尿に関連した症状が現れることがあります。
こうした排尿の症状は前立腺がんに特有な症状ではなく、「前立腺肥大症」という病気でも現れます。前立腺肥大症とは、その名の通り前立腺が大きくなる良性の病気です。年齢とともに発症しやすくなり、特に50歳以上に多くみられます。
前立腺がんと前立腺肥大症はまったく別の病気であり、前立腺肥大症が前立腺がんになることはありません。ただ、2つの病気が同時に起こることも少なくなく、前立腺肥大症の症状から早期の前立腺がんの発見につながることもあります。
がんが進行し、膀胱や尿道に広がると、尿や精液に血液が混じるといった症状がみられることがあります。さらに膀胱内の尿管までがんが広がると、尿の流れが妨げられ、腎臓の機能が悪くなることもあります。
前立腺がんは、リンパ節や骨に転移することが多いがんです。がんが骨に転移するとその部分に痛みが生じ、背部痛や腰痛として感じられたり、しびれが現れたりすることがあります。
■前立腺がんの主な症状
- 尿が出にくい
- 頻尿(排尿の回数が多い)
- 残尿感
- 尿意切迫(我慢できないほどの強い尿意を感じる)
- 尿失禁
- 血尿(尿に血液が混じる)
- 閉尿(尿道が強く圧迫されて尿が出なくなる)
- 下腹部の違和感
- 血精液症(精液に血液が混じる)
- 水腎症(尿がうまく流れなくなって腎臓が腫れる)
- 背部痛、腰痛
上記のような症状が数週間にわたって続く場合は、放置せずに早めに医師に相談することをおすすめします。症状から病気を突き止めることはできないため、泌尿器科を受診して適切な診察・検査を受けましょう。
前立腺がん早期発見のために役立つ検査
前立腺がんについては、国が指針として定めているがん検診はありませんが、早期発見のために役立つ検査がありますのでご紹介します。
■PSA検査(腫瘍マーカー)
PSA検査とは、前立腺で作られるタンパク質である「PSA(前立腺特異抗原)」の量を調べる血液検査です。
日本泌尿器科学会はPSA検査を用いたがん検診は前立腺がんによる死亡率を低下させる効果があるとして、受診を推奨しています。前立腺がんの発症が増えてくる40代後半~50代に差し掛かったら、定期的なPSA検査が、前立腺がんの早期発見に役立つ可能性があります。特に、前立腺がんの家族歴がある場合には、発症リスクが高まるとされており、40歳から検査を受けることをおすすめします。
■MRIによる画像診断
PSA検査に加えて、近年はMRIによる検査を受ける方も増えています。MRI検査は磁気を利用して体内の様子を画像化する検査です。
PSAの数値は、前立腺がん以外にも、前立腺肥大症や前立腺炎でも上昇することがあります。そのため、PSA検査で基準値を超えた場合、本当にがんがあるかどうかを確定するためには、細胞を採取して調べる「生検」が必要になります。生検は、肛門や会陰部から針を指して組織を採取する検査で、身体的・精神的な負担を感じる方も少なくありません。
そこで役立つのがMRI検査です。生検の前にMRI検査を行い、詳しく調べることで、
・そもそも生検を行う必要があるのか(不要な検査をなるべく避ける)
・がんが疑われる場合は、正確な位置や大きさ
を把握しやすくなります。
このように、PSA検査とMRI検査を組み合わせることで、受診される方の負担を減らしながら、検査の精度を高めることができます。MRIは、放射線による被ばくや痛みがなく、検査着を着たまま行えるので恥ずかしさもありません。
進興会の各施設では、各種健康診断・人間ドックのオプションとしてPSA検査を実施しております。また、下記の施設ではMRI検査も受診いただくことができます。
さらに施設によっては前立腺超音波検査などの、PSA検査と組み合わせて前立腺の病気を調べられる検査もご用意しています。詳しくは、最寄りの施設へお気軽にお問い合わせください。
【関連記事】40代から受けておきたいPSA検査による前立腺がん検診
参考文献
※1 国立がん研究センター, がん情報サービス がん種別統計情報 前立腺
(https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/20_prostate.html#anchor1)
※2 日本泌尿器科学会, 前立腺がん検診ガイドライン 2018年版
※3 日本泌尿器科学会, 前立腺癌診療ガイドライン 2023年版




