肝臓がんで増えている原因とは?どんな症状が現れる?

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、病気があっても知らず知らずのうちに進行していることが少なくありません。近年はメタボリックシンドロームを背景にした脂肪肝・肝炎が増えてきており、そこから肝臓がんに進行するリスクが高まっています。今回は、肝臓がんのリスクを高める原因や主な症状を中心に、詳しく解説します。

肝臓がんとは?

からだにある臓器の中で最も大きく、1~1.5kgほどの重さがある肝臓。栄養素の貯蔵・代謝、有害物質の解毒、脂肪の消化吸収に必要な胆汁の産生など、多岐にわたる機能を担っています。

肝臓がんは肝臓にできるがんの総称で、「肝がん」とも呼ばれます。中でも、肝臓の主な細胞である肝細胞ががん化したものは「肝細胞がん」、肝臓の中を通る胆管という細い管にできたがんは「肝内胆管がん(胆管細胞がん)」といい、区別されています。肝臓がんの90%以上は肝細胞がんなので、一般的に「肝臓がん」というと「肝細胞がん」のことを意味します。

肝臓がんは50歳代から増加し始め、年齢と共に罹患率は上昇し、80~90歳代でピークを迎えます。男女比はおよそ2:1で、女性より男性に多いという特徴があります[※1]。肝臓がんによる死亡者数は1990年代から急増し、2000年代中ごろにピークに達しますが、その後は年々減少し続けています。その理由は、かつて肝臓がんの最大の原因だったB型・C型肝炎ウイルスによる、ウイルス性肝炎に対する予防策と抗ウイルス治療が格段に進歩したためです[※2]。

ウイルス性の肝臓がんが減少した一方で、近年では非ウイルス性の肝臓がんが急激に増えてきており、新たな問題となっています。特に注目されているのが、肥満や糖尿病などの代謝機能の異常に関連した脂肪肝・肝炎を背景とした肝臓がんです。非アルコール性の脂肪肝・肝炎の患者数は1,000万人以上いると推計されており、がんへの進行をいかに防ぐかが重要な課題となっています。

肝臓がんの発症リスクを高める原因

肝臓がんの多くは、肝炎ウイルス(B型、C型)の感染やアルコール摂取、肥満や糖尿病などによって慢性肝炎、肝硬変が引き起こされ、その結果発症に至ります[※3]。特に近年増えているのが、肥満や糖尿病が原因となるケースです。

①ウイルス感染による肝炎

B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスの持続感染(長期間にわたり体内にウイルスがとどまる感染)は肝臓がんの主な原因の1つです。ウイルス感染により肝細胞の炎症と再生が繰り返されると、慢性肝炎から肝硬変を経て、肝臓がんを発症すると考えられています。

かつては肝臓がんの90%がB型・C型肝炎ウイルス感染によるものでしたが、近年は肝炎ウイルス検査の普及や抗ウイルス療法の進歩によって、ウイルス性肝炎に起因する肝臓がんは減少傾向にあります。

②アルコール性肝障害

長期にわたる大量飲酒は、肝臓に対するダメージが肝硬変の原因になり、肝硬変からがんに進行することもあります。このようなアルコールによって引き起こされる脂肪肝・肝炎・肝硬変をアルコール性肝障害と呼びます。

2011~2015年に診断された非ウイルス性の肝臓がんのうち、アルコール性肝障害によるがんは32.3%を占めています[※2]。国民全体で飲酒量は減少傾向にありますが、長期間の大量飲酒が原因の肝硬変は増えています。

③非アルコール性の脂肪肝・肝炎

肥満や糖尿病、脂質異常症、高血圧などの代謝機能の異常に関連した脂肪肝・肝炎を「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)」といいます。MASLDはメタボリックシンドロームの肝臓病とも言え、その主な原因は生活習慣の乱れやストレス、運動不足などです。

MASLDの有病率は約30%とされ、女性より男性に多く、男性では中年層、女性では60代に多くみられます[※2]。肥満人口の増加に伴って患者数は今後ますます増加していくと考えられており、肝臓がんへの進行を防ぐためにも、肝機能の検査を欠かさず受けて早期発見につなげることが重要です。

肝臓がんになると、どんな症状が現れる?

肝臓はある程度のダメージを受けても、残っている正常な細胞がカバーして機能を代償する能力があります。そのため、肝臓の機能がなんとか保たれているうちは症状が現れないことが多く、「沈黙の臓器」と呼ばれています。

肝臓にがんがあったとしても、初期の段階では自覚症状がないことがほとんどです。肝臓がんに特有の初期症状はありませんが、すでに肝炎や肝硬変などの肝臓病を患っていて肝機能が低下している場合、黄疸(皮膚や目が黄色くなる症状)や食欲不振、むくみ、倦怠感などの症状が現れます。がんが進行すると、腹部にしこりや痛み、圧迫感などの症状が現れることがあります。

このように、肝臓がん、特に早期の場合は自覚症状をきっかけに早期発見することは非常に難しく、人間ドックやほかの病気で受けた検査がきっかけで偶然発見されることが少なくありません。肝臓がんの発生には慢性的な肝炎や肝硬変が関係しているので、それらを早期発見して肝臓がんの発症を防ぐことが重要です。

定期的な肝機能検査で、肝臓がんを未然に防ぐ

肝臓がんの発症を防ぐには、バランスのよい食事と適度な運動、適正な体重の維持、節酒、肝炎ウイルス(B型・C型)の感染予防などが有効です。

B型肝炎ウイルスはワクチンで感染を予防することができるため、感染人口が多い国に長期滞在する方や、医療従事者やコンタクトスポーツ選手など、血液や体液に触れる可能性がある方は、ワクチン接種をおすすめします。

また、肝炎ウイルスに感染していても自覚症状はないため、感染の有無を早期に知ることも肝臓がんの発症予防においては重要です。過去に肝炎ウイルス検査を受けたことがない方は、保健所や自治体が委託する医療機関で無料で検査を受けられます。

肝臓がんは肝炎や肝硬変から進行することが多いため、自分の肝臓の状態を知っておくことも大切です。肝臓のダメージの程度を知るには、採血を行い、ALT(GPT)やAST(GOT)といった肝機能の数値を調べる方法が最も簡単です。健康診断でALT(GPTともいう)値が30を超えていたら、肝炎が進行している可能性があるため、必ず医療機関を受診するようにしましょう[※4]。

肝臓がんや肝炎、肝硬変などの肝臓の異常を早期発見するには、腹部超音波(エコー)検査などで肝臓そのものを確認する方法が有効です。進興会では、各種健康診断・人間ドックのオプションとして腹部超音波検査や上腹部マルチスライスCT検査などの画像検査をご用意しています。詳しくは、最寄りの施設へお気軽にお問い合わせください。

記事監修

森山 紀之

森山 紀之

医療法人社団進興会 理事長

1973年千葉大学医学部卒。
元国立がん研究センター がん予防・検診研究センター センター長、東京ミッドタウンクリニック常務理事 兼 健診センター長を経て、現職。

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